比売多多良伊須気余理比売(五十鈴依媛)は、初代・神武天皇の皇后です。
彼女は神の声を受け取る力を持つ巫女的な女性で、
大和の地霊と天孫をつなぐ重要な役割を果たしました。
この記事では、彼女の誕生、名前の意味、性格、象徴、そして結婚後まで、
分かりやすく紹介します。
はじめにー名前の意味
比売多多良伊須気余理比売(ひめたたらいすけよりひめ)は「古事記」に記載されている名前ですが、「日本書紀」では媛蹈鞴五十鈴媛(ひめたたらいすずひめ)と名前が異なります。
ここではそれぞれの名前の意味を解説します。
比売多多良伊須気余理比売(ひめたたらいすけよりひめ)-「古事記」
伊須気(いすけ):身がすくむほどの畏れ・震え を表す
余理(より):依代、神が降りる場所
多多良(たたら):製鉄に使われる炉に、空気を入れるための鞴(ふいご)
媛蹈鞴五十鈴媛(ひめたたらいすずひめ)-「日本書紀」
- 五十鈴(いすず):清らかな鈴の音、神事の象徴
- 依媛(よりひめ):神が依る姫、巫女的存在
比売多多良伊須気余理比売の基本プロフィール
{名 前}
- 比売多多良伊須気余理比売(ひめたたらいすけよりひめ)-「古事記」
- 媛蹈鞴五十鈴媛(ひめたたらいすずひめ)-「日本書紀」
{家 族}
- 父:大物主神(古事記) 事代主命(日本書紀)
- 母:勢夜陀多良比売(古事記) 玉櫛媛(日本書紀)
- 夫:神武天皇(初代天皇)
- 第一子:日子八井命(ひこやいのみこと)ー「日本書紀には記載なし」
- 第二子:神八井耳命(かむやいみみのみこと)
- 第三子:神沼川耳命(かんぬなかわみみのみこと)/綏靖天皇(第二代天皇)
{キャッチフレーズ}
「神意を受け、王権を導く─神武東征の物語を完成させる最後の巫女姫」
{性 格}
- 静かで神秘的、内に強い芯を持つ女性
- 神の声を受け取る“依代”としての落ち着きと覚悟
- 必要なときには迷いなく神意を告げる勇気
{象 徴}
- 依代(よりしろ)ー神が降りる器としての役割
- 震え(いすけ)ー神懸りの瞬間に起こる畏れと神意の発露
- 大和の地霊ー大和の土地そのものの承認・調和
- 王権の正統性ー神武政権が“天の意思に沿う”ことの証明
比売多多良伊須気余理比売の誕生
被勢夜陀多良比売は、美しいと評判の娘でした。ある日、彼女が川で用を足していると、上流から丹塗矢(赤い矢)が流れてきて、彼女のホト(陰部)を突きました。
驚きながらも被勢夜陀多良比売は、その矢を持ち帰り床の上に置きます。
すると矢は、麗しい男性の姿に変わったのです。その男性こそ大物主神でした。
やがて二人は結婚し、娘が生まれます。
その娘は、富登多多良伊須須岐比売()と名付けられましたが、のちに「ホト」という名を嫌って、比売多多良伊須気余理比売(ひめたたらいすけよりひめ)に改めました。
神武天皇との出会い

神武天皇は即位に当たり、相応しい正妃を探していました。
そんな時、大和の国に入り、狭井河(サイガワ)の岸辺にいる7人の女性を見かけます。
その中のひとりが、伊須気余理比売(いすけよりひめ)=「比売多多良伊須気余理比売」
でした。神武天皇は美しい彼女を選びます。家臣の大久米命(おおくめのみこと)も
彼女の出生の逸話を知り、正后にすべきだと説きました。そして伊須気余理比売は、
結婚することを決めます。神武天皇は、彼女の家に行き、一緒に一晩を過ごしました。
神武天皇の崩御後ー多芸志美美命の反逆
伊波礼毘古命(いわれひこのみこと)=「神武天皇」は、東征に出る前に阿比良比売(あひらひめ)と結婚していて、子がいました。その名は、多芸志美美命(たぎしみみ の みこと)。
しかし神武天皇はその後、比売多多良伊須気余理比売を正后に迎えたため、彼は庶子の身分となりました。
神武天皇が崩御した後、多芸志美美命は皇位を継ごうと考えます。彼は、未亡人となった比売多多良伊須気余理比売を妻にして、神武天皇と彼女の間にできた子を暗殺しようと企てます。
それを知った比売多多良伊須気余理比売は、子供たちに和歌を詠んで送り、彼らの身の危険を知らせました。
知らせを受けた子供たちは、先手を打って多芸志美美命を打ち取りました。その際に最も活躍した神沼河耳命が皇位を継ぎ、2代天皇として即位したのです。
比売多多良伊須気余理比売を祀る神社
橿原神宮(奈良県)
■御祭神
- 神武天皇(神倭伊波礼毘古命)
- 媛蹈鞴五十鈴媛命(ひめたたらいすずひめのみこと) ※比売多多良伊須気余理比売
■神社の特徴
- 日本建国の地として創建された格式高い神宮
- 境内は広大で、神武天皇の即位を象徴する建築が並ぶ
■ご利益
- 夫婦円満・家庭円満・縁結び・国家安泰・事業成功
溝咋神社(大阪府茨木市)
■御祭神
- 伊居太神(いけだのかみ)
- 事代主神(ことしろぬしのかみ)
- 伊須気余理比売命(いすけよりひめのみこと) ※比売多多良伊須気余理比売と同一神
■神社の特徴
- 『延喜式神名帳』にも記載される古社
- 茨木市の地名「五十鈴」「五十鈴町」の由来とされる
- 神武天皇の皇后を祀る数少ない神社
- 境内は静かで、古代の大和政権とのつながりを感じる雰囲気
■ご利益
- 縁結び・夫婦和合・家内安全・女性守護・安産・土地守護
狭井神社(奈良県桜井市三輪)
■御祭神
- 大神荒魂神(おおみわのあらみたまのかみ) ※大神神社の主祭神・大物主神の荒魂
- 大物主神(おおものぬしのかみ)(配祀)
- 媛蹈鞴五十鈴姫命(ひめたたらいすずひめのみこと)(配祀)
■神社の特徴
- 三輪山登拝の受付所 がある神社として有名
- 薬井戸の御神水 は、 古代から“病を癒す水”として知られている
■ご利益
- 病気平癒・健康長寿・心身の浄化・厄除け・災難除け・再生・立て直し
東大谷日女命神社(奈良県橿原市畝傍町)
■御祭神
- 姫蹈鞴五十鈴姫命 ※比売多多良伊須気余理比売
■神社の特徴
- 畝傍山の麓に鎮座する古社
- 参道の脇には「庚申」と刻まれた石碑があり、妻入切妻造の小さなお堂に納められている
- 石段を上って左側(南側)に扇形に穴の穿たれた手水鉢が配置されている
- 小規模ながら神聖な雰囲気が強い
■ご利益
- 母性守護・安産・子宝・家庭円満
おわりに
最後までお読みいただきありがとうございました。
比売多多良伊須気余理比売は、神武天皇の皇后として大和に根づく王権の次世代への礎を築いたのち、静かに歴史の表舞台から姿を消します。
しかし、彼女が守った子らは皇統を継ぎ、彼女の血と祈りは日本の歴史の中に確かに息づいていきます。名は消えても、その存在は大和の静かな神気として今も生き続けています。
またお会いしましょう。


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