日本神話における「国生み」「神生み」を担った偉大な母神。
その神の名は、伊邪那美命(いざなみのみこと)。
また彼女は、火の神を産んで命を落とし、黄泉の国の主宰神となった存在です。
本記事では、創造と死という二面性を持つ稀有な神・伊邪那美命の、
名前の由来・家族構成・性格・神話エピソードをわかりやすく解説します。
伊邪那美命の基本プロフィール
名前の由来
名前の由来について説明します。
「伊邪那(いざな)」:誘う(いざなう)の語幹
「美(み)」:女性を表す語
◎つまり、”誘う女神”という意味になるといわれています。
表記と呼び名
- 伊邪那美命(いざなみのみこと)『古事記』
- 伊弉弥命(いざなみのみこと)『日本書紀』
- 黄泉津大神(よもつおおかみ)〔黄泉の国の主宰神〕
家族構成
- 親:なし
- 配偶者:伊邪那岐命(いざなぎのみこと)
- 子:森羅万象の多くの神・日本国土
キャッチフレーズ
- 「国産みの母にして黄泉の主宰神」
性格・象徴
- 創造の女神(大地母神):日本列島と自然神を次々と生み出す
- 死の支配者(黄泉津大神):火之迦具土神を産んで命を落とし黄泉の国へ
- 死と再生、境界を司る
伊邪那美命の神話エピソード

伊邪那岐命との結婚と「国生み」
天地開闢(てんちかいびゃく)において、神世七代(かみよななよ)の
最後の二柱として、伊邪那岐命とともに伊邪那美命は生まれました。
彼女たちは、高天原の天津神からドロドロしている大地(地上)を
完成させるように命じられます。
そこで、天津神から授かった天沼矛(あめのぬぼこ)を使って
大地を掻き混ぜると、オノゴロ島ができました。
二柱は、結婚するためにオノゴロ島へ降りていきます。
まず、島に「天の御柱(みはしら)」と「八尋殿(やひろどの)」を建てます。
そして互いに逆の方向から回って、出会ったところで
告白しようということにしました。
最初に伊邪那美命の方から告白をし、次に伊邪那岐が告白することで、
結婚は無事に成立しました。
いよいよ「国生み」が始まります。
しかし、女性である伊邪那美命から告白したことは、正しいことではないとして、
まともな子供(国)ができませんでした。
二柱は結婚をやり直し、男性である伊邪那岐命から告白したことで、
立派な子供(国)が生まれるようになりました。
◎古代日本の男女間が表れているエピソードだといえます。あえてこのような話を書いたのは、古代の日本では、「男尊女卑」という考え方が優先された証だといえるのではないでしょうか。
「神生み」と伊邪那美命の死
「国生み」を終えた二柱は、家宅や森羅万象の「神生み」を行います。
家宅神:大屋毘古神(おおやびこのかみ)〔家宅神の代表例〕
森羅万象の神
石の神:
●石土毘古神(いわつちひこのかみ):石と土を司る神
●石巣比売神(いわすひめのかみ):砂石や砂利を司る女神
●大戸日別神(おおとひわけのかみ):石造りの家屋や門を守る神
木の神:
●久久能智神(くくのちのかみ)
海の神:
●大綿津見神(おおわたつみのかみ)
水の神:
●弥都波能売神(みづはのめのかみ)
風の神:
●志那都比古神(しなつひこのかみ)
山の神:
●大山津見神(おおやまつみのかみ)
野の神:
●鹿屋野比売神(かやのひめのかみ)
火の神:
●火之迦具土神(ほのかぐつちのかみ)
などの自然神を含めた多くの神を生んでいきます。
しかし、伊邪那美命は、火の神・火之迦具土神(ほのかぐつちのかみ)を
生んだ際、火傷を負って死んでしまいます。
亡くなる前にも彼女は、嘔吐物や排泄物から多くの神を生みました。
- 金山毘古神(かなやまひこのかみ):鉱山・金属の神(嘔吐物より誕生)
- 波邇夜須毘売神(はにやすひめのかみ):土・陶器の神(大便より誕生)
- 弥都波能売神(みづはのめのかみ):水・農耕の神(小便より誕生)
最後まで「神生み」を続けたかったのかもしれません。
伊邪那美命は、死者の国・黄泉の国へ旅立ちます。
黄泉の国での決別
黄泉の国で暮らしていた彼女のもとへ、愛する夫・伊邪那岐命が、迎えに来てくれました。
しかし、黄泉の国の食物を食べてしまったので、もう戻ることができません。
夫と帰りたい伊邪那美命は、
「黄泉神と相談してくるので、その間私の姿を見ないでください」
と言って、奥の方へ消えていきました。
伊邪那岐命は、長い間待っていたのですが、我慢できなくなり
火を灯して奥を覗いてみます。そして見てしまったのです。
蛆がたかり、蛇の形をした雷神をまとった恐ろしい彼女の姿を。
恐れおののいた伊邪那岐命は、大慌てで逃げ出します。
醜い姿を見られてしまった伊邪那美命は、恥じて彼を追いかけます。
何とか地上まで逃げることができた伊邪那岐命は、追手が来ないように
黄泉の国と地上の境である黄泉比良坂(よみひらさか)を千人でやっと動かせる千引の岩で塞ぎました。
その岩を挟んで伊邪那美は告げます。
「愛しい人よ、こんなひどい仕打ちをするなら私は1日に1000の人間を殺してみせましょう」
その言葉に伊邪那岐は答えます。
「愛しい人よ、ならば私は、1日に1500の子どもを産ませよう」
こうして彼と彼女の結婚生活は終わってしまったのです。
愛し合う二柱が、このような別れ方をするのを悲しいと思うのは、私だけではないはずです。
◎このエピソードは、「なぜ人には寿命があるのか」「死と再生のサイクル」を伝える抽象的な意味が込められています。
おわりに
最後までお読みいただきありがとうございました。
伊邪那美命は、日本という国の大地と神々を生み出した「創造の母」でありながら、
黄泉の国を司る「死と再生の神」という二面性を持つ特別な存在です。
その神話は、私たちの人生にある“始まり”と“終わり”、
そして“新しい一歩”を象徴しています。
この記事で神話を知ることにより、
伊邪那美命の物語をより深く感じてくれたらうれしいです。
またお会いしましょう。
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