高天原が闇に包まれたとき、神々の前に静かに立ち上がった一柱の神がいました。
その名は思金神(おもいかねのかみ)。
深い思慮と先見の明を兼ね備え、天照大御神を岩戸から導き出した“高天原の参謀”です。
本記事では、思金神の名前の由来、家系、神話での活躍、祀られる神社、ご利益までを
丁寧に解説します。
はじめにー思金神とは
名前の由来について説明します。
表記が多少異なるので、順に説明していきます。
「思金神」→『古事記』 「思兼神」→『日本書紀』
- 「思(おもい)」:思慮・熟考
- 「金・兼(かね)」:兼ね備える、確かなもの
「常世思金神」→『古事記』 「八意思兼神」→『先代旧事本記』
- 「常世(とこよ)」:永遠・未来を見通す知恵
- 「八意(やごころ)」:多くの思慮を持つこと
★つまり神名は、”多くの思慮を兼ね備えた、ゆるぎない知恵の神”という意味になります。
思金神の基本プロフィール
{名 前}
- 思金神(おもいかねのかみ)→『古事記』
- 常世思金神(とこよのおもいかねのかみ)→『古事記』
- 思兼神(おもいかねのかみ)→『日本書紀』
- 八意思金神(やごころのおもいかねのかみ)→『先代旧事本記』
- 八意思兼神(やごころのおもいかねのかみ)→『先代旧事本記』
{キャッチコピー}
- 「高天原の参謀長—八意の知恵で未来を照らす神」
{家 族 構 成}
◆父:高御産巣日神(たかみむすひのかみ)ー高木神
◆兄弟姉妹
- 万幡豊秋津師比売命(よろづはたとよあきづしひめのみこと)ー天忍穂耳命の妻
- 三穂津姫(みほつひめ)ー『日本書紀』
- 少彦名命(すくなひこなのみこと)ー『日本書紀』
◆子
- 天表春命(あめのうわはるのみこと)
- 天下春命(あめのしたはるのみこと)
- 天手力男命(あめのたぢからおのみこと)
{性 格}
- 冷静沈着:混乱の場面でも最善策を導く
- 先見性がある:未来を見通す「常世」の性質
- 調停役:神々の合議をまとめる
{象 徴}
- 知恵・判断力・未来予知・祭祀・政務の統括
神話でのエピソード

天井戸神話
天照大神と弟・須佐之男命(すさのおのみこと)との誓約のあとのこと。
須佐之男命は乱行を繰り返し、天照大神は怒って岩戸に隠れてしまいます。
世の中は、闇に包まれ禍が起きるようになりました。
困った神々は、どうすれば天照大神が出てきてもらえるのかを相談します。
様々な意見を聞いていた思金神は、自分の案を告げます。
「天宇受売命(あまのうずめのみこと)に岩戸の前で踊らせ、
皆で騒げば気になって岩戸を開けるのでは」
作戦は見事に成功します。
天照大神は外が騒がしいのを不思議に思い、岩戸を少し開けて覗いてみました。
その時を待っていた天手力男神(あめのたぢからおのかみ)が、
怪力で岩戸を開き天照大神を引き出すことに成功しました。
こうして思金神の思慮により、世の中に光が戻ってきたのです。
葦原中国平定
高天原(天界)に住む天照大神は、
「葦原中国は、天津神(天界の神)が治めるべきだ」と、考えていました。
天照大神と高木神は、神々を集めて誰を地上に派遣すべきか決めさせます。
そこで中心的な役割をしたのが思金神。
彼は、神々の意見をまとめて派遣する神の選定を行いました。
まさに彼は、天照大神の参謀として重大な役割を果たしていた神なのです。
天孫降臨
邇邇芸命(ににぎのみこと)が天孫降臨をする際、思金神は随伴して地上に降ります。
さらに、天宇受売命・天手力男神など、天井戸で活躍した神も随伴します。
これは、天井戸での活躍を天照大神が、高く評価したからでしょう。
特に思金神は、その深い思慮に天照大神から全幅の信頼を寄せられています。
その信頼に応えるため彼は、地上で政務・祭祀を補佐する役目を十分に果たしました。
思金神を祀る主な神社
安布知神社(長野県下伊那郡阿智村)
■御祭神
- 天八意思兼命(あめのやごころおもいかねのみこと):思金神
- 誉田天皇(ほむたのすめらみこと)
- 須佐之男命(すさのおのみこと)
■神社の特徴
- 思金神ゆかりの最古級の地とされ、信濃国造の祖を祀る古社
- 周囲は山々に囲まれ、昼神温泉郷の近くに位置するため、 参拝と温泉をセットで訪れる人も多い
- 境内のヒイラギの古木とサカキの古木は阿智村の天然記念物
■ご利益
- 知恵・判断力の向上・学問成就・合格祈願・仕事運・企画力アップ
思金神社(神奈川県横浜市)
■御祭神
- 八意思兼命(やごころおもいかねのみこと)
- 下照比売(したてるひめ)
■神社の特徴
- 若き日の思金神に、 下照姫神が恋文を送ったという恋愛神話(後世伝承)が残る
- 思金神社ゆかりの高知県の四万十川源流から採取された「霊動石」がある
- 「願いが叶う階段」はパワースポットとして有名
■ご利益
- 縁結び・恋愛成就・学問成就・受験合格・仕事運・直感力
秩父神社(埼玉県秩父市)
■御祭神
- 八意思兼命(やごころおもいかねのみこと)
- 知知夫彦命(ちちぶひこのみこと)
- 天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)
- 秩父宮雍仁親王(ちちぶのみや やすひとしんのう)
■神社の特徴
- 創建約2100年と伝わる古社
- 本殿の彫刻「子宝・子育ての虎」「つなぎの龍」など、 左甚五郎系統の彫刻群が名物
- 毎年12月に行われる「秩父夜祭り」は、ユネスコ無形文化遺産
- 秩父神社柞の森のブッコウソウは、埼玉県の天然記念物
■ご利益
- 学問成就・企画力・出世運・家内安全・地域守護
阿智神社(長野県下伊那郡阿智村)
■御祭神
- 天八意思兼命(あめのやごころおもいかねのみこと)
- 天表春命(あめのうわはるのみこと)
■神社の特徴
- 天表春命は、 阿智祝部(あちのはふりべ)の祖神とされている
- 上宮は山中にあり、古代祭祀の雰囲気が色濃い
- 下宮は里にあり、参拝しやすく、 昼神温泉とセットで訪れる参拝者が多い
- 境内に思金神が天から降りてきた場所・磐座(いわくら)がある
■ご利益
- 判断力の向上・学問成就・企画力アップ・家運隆盛(祖神信仰)・問題解決
★今度の休日に、日常の喧騒を離れ、思金神の知恵に耳を澄ませてみてはいかがでしょうか。
おわりに
最後までお読みいただきありがとうございました。
高天原の知恵を司り、数々の難事を導いてきた思金神。
八意の知恵は、古代だけのものではありません。
今を生きる私たちにも寄り添い、迷いの中に小さな光を灯してくれます。
迷いに立ち止まるとき、決断に揺れるとき、 ふと耳を澄ませば、
思金神はそっと背中を押してくれるかもしれません。
あなたの歩む道にも、確かな答えが見つかりますように。
またお会いしましょう。


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